国連と死刑
禁止はしていないが、狭めてきた
「死刑は国際法で禁止されている」と語られることがありますが、正確ではありません。国際法は死刑そのものを禁止していません。ただし、使ってよい範囲を条件で狭め続けてきました。何が禁止で、何が勧告にとどまるのかを整理します。
自由権規約 — 禁止ではなく、条件付き
国際人権規約(自由権規約、1966年採択)6条は、生命に対する権利を定めたうえで、死刑を廃止していない国について次の条件を置いています。
- 死刑は「最も重大な犯罪」に対してのみ科すことができる(2項)
- 18歳未満の者が行った犯罪について科してはならない(5項)
- 妊娠中の女性に対して執行してはならない(5項)
- 恩赦または減刑を求める権利が保障されなければならない(4項)
つまり、死刑を持つこと自体は禁じていません。しかしこの条件は、批准した国を法的に拘束します。日本も批准しています。
「最も重大な犯罪」をどこまで狭めるか
争点になってきたのがこの言葉です。国連の人権機関は、これを意図的な殺人に限られると解釈してきました。
この解釈に立てば、麻薬犯罪、経済犯罪、政治的な罪名、姦通、冒涜、同性間の行為などへの死刑は、いずれも条件を超えていることになります。このサイトの記録に載る執行の相当部分が、この論点に関わっています。
ただし、この解釈を受け入れない国もあります。イランやサウジアラビアは、自国の法体系に基づく判断であるとして、この解釈に従っていません。
第二選択議定書 — これを批准すると廃止義務が生じる
1989年、自由権規約に死刑廃止を目的とする第二選択議定書が採択されました。これを批准した国は、死刑を廃止する義務を負います。
批准しているのは、2020年代半ばの時点で90か国前後です。日本は批准していません。米国、中国、イラン、サウジアラビアも批准していません。
批准するかどうかは各国の判断に委ねられており、批准しないこと自体は違反にあたりません。
総会決議 — 拘束力はないが、票数が動いている
国連総会は2007年以降、死刑執行のモラトリアム(一時停止)を求める決議を繰り返し採択してきました。おおむね2年に1度採択され、賛成票は回を追うごとに増えています。
この決議には法的な拘束力がありません。各国に方針を求める政治的な文書です。日本は一貫して反対票を投じてきました。
拘束力はありませんが、賛成国が増え続けているという事実そのものが、国際的な流れを示す指標として扱われています。
日本が受けている勧告
日本は自由権規約を批准しているため、定期的に規約人権委員会の審査を受けます。同委員会は日本に対し、次のような点を繰り返し指摘してきました。
- 死刑の廃止、または執行のモラトリアムを検討すること
- 死刑確定者とその家族に、執行の日時を事前に知らせること
- 再審請求中の執行を行わないこと
- 死刑確定者の処遇(面会や通信の制限)を改善すること
これらは勧告であり、法的な強制力はありません。日本政府は、国民の多数が死刑存置を支持していることなどを理由に、制度の維持を説明しています。
執行の告知については、日本の執行手続きで触れたとおり、当日の朝に告げる運用の是非をめぐる訴訟が国内でも続いています。
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