死刑を廃止した国は、
どうやってやめたのか
いま世界の145か国が、法律上または事実上、死刑を使っていません。国連加盟国の4分の3以上です。では、それらの国は国民の多数が反対したからやめたのでしょうか。実際には、そうでない場合のほうが多いのです。
3つの状態がある
「廃止国」といっても、一律ではありません。国際的には次のように区別されます。
- 全面廃止 — すべての犯罪について死刑を廃止した国。2025年末で113か国。
- 通常犯罪に限り廃止 — 戦時の軍法などには残しているが、通常の犯罪では廃止した国。
- 事実上の廃止 — 法律には死刑が残っているが、10年以上執行していない国。韓国、ロシアなどが該当します。
3つを合わせて145か国です。実際に執行した国は、2025年で17か国しかありません。
フランス — 世論が反対のまま廃止した
フランスが死刑を廃止したのは1981年です。当時の世論調査では、国民の6割前後が死刑の存続を支持していたとされます。それでも、ミッテラン大統領と法相ロベール・バダンテールが議会に廃止法案を提出し、可決されました。
バダンテールは、死刑制度は誤判の可能性を排除できず、国家が人を殺すことを正当化できないと主張しました。廃止から40年以上が経ち、現在のフランスで死刑復活を求める動きは主流になっていません。
この例が示しているのは、廃止は世論が変わってから行われたのではなく、廃止してから世論が変わったという順序です。同じ経過をたどった国は少なくありません。
ヨーロッパでは加盟条件になった
欧州評議会と欧州連合は、死刑の廃止を加盟の条件としています。このため、東欧の多くの国が1990年代以降、EU加盟を目指す過程で死刑を廃止しました。
いま、ヨーロッパで死刑を執行しているのはベラルーシ1国だけです。
韓国 — 法律は残したまま、28年間執行していない
韓国は死刑制度を法律上は維持していますが、1997年12月を最後に執行していません。10年以上執行がないため、国際的には「事実上の廃止国」に分類されています。
法律を変えたわけではなく、歴代の政権が執行を命じないという判断を続けた結果です。日本と同じく、執行するかどうかが行政の判断に委ねられている制度のもとで、命令を出さないという選択が続いています。
逆の動きもある
一方向に進んでいるわけではありません。いったん廃止した後に復活させた国や、長く執行していなかったのに再開した国もあります。
治安の悪化やテロ事件をきっかけに、執行が再開される例が報告されています。国際的な統計で「事実上の廃止」に分類されていた国が、再び執行国に戻ることがあります。
日本の位置
日本は、死刑制度を維持し、実際に執行している国です。世界の状況で見たとおり、経済的に発展した国のなかでは少数派になっています。
日本政府は、国内の世論調査で死刑存続への支持が高いことを、制度を維持する理由のひとつとして挙げてきました。国連の関係機関からは繰り返し廃止やモラトリアムを勧告されていますが、政府はこれを受け入れていません。
なお日本にも、記録で分かるとおり、執行が1件もなかった年があります。2020年、2023年、2024年です。法律ではなく、法務大臣の判断によるものです。
出典
- Death penalty in 2025 – Facts and figures(アムネスティ・インターナショナル)
- Executions Around the World(Death Penalty Information Center)
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