日本の死刑執行は
どう決まり、どう行われるか
日本の死刑執行は、法律で手順が定められています。ここでは、その手続きを条文にそって説明します。死刑制度への賛否には触れません。日本の死刑執行記録に並ぶ日付が、どういう過程を経て決まっているのかを知るための説明です。
執行の方法は「絞首」と決まっている
刑法11条1項は「死刑は、刑事施設内において、絞首して執行する」と定めています。日本では明治以来この方法が変わっておらず、他の方法は法律上認められていません。
刑場が置かれているのは、東京・大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌の7つの拘置所です。執行は、その人が収容されている施設で行われます。記録に「東京拘置所」「大阪拘置所」と書かれているのは、この執行場所です。
決めるのは法務大臣ひとり
刑事訴訟法475条1項は「死刑の執行は、法務大臣の命令による」と定めています。裁判所が死刑判決を確定させても、それだけでは執行されません。法務大臣が命令書に署名しない限り、執行は行われないという構造になっています。
同条2項は、その命令を「判決確定の日から六箇月以内にこれをしなければならない」としています。しかし実際には、確定から執行まで10年以上かかることが珍しくありません。
なぜ6か月を過ぎるのか
理由は2つあります。
1つは、条文自身に例外があることです。再審請求や恩赦の出願をしている期間などは、この6か月に算入しないと定められています。日本の死刑確定者の多くが再審請求をしているため、この除外が広く働きます。
もう1つは、裁判所がこの6か月の規定を「訓示規定」と解釈していることです。訓示規定とは、守るべき目標を示したもので、破っても違法にはならない定めをいいます。そのため、6か月を過ぎても法務大臣が責任を問われることはなく、事実上の期限として機能していません。
命令が出たら5日以内
刑事訴訟法476条は「法務大臣が死刑の執行を命じたときは、五日以内にその執行をしなければならない」と定めています。何年も動かなかった手続きが、この段階で急に動きます。
実務上は、金曜日に執行されることが多いと指摘されてきました。また、刑事収容施設法178条2項により、日曜日、土曜日、国民の祝日、1月2日と3日、12月29日から31日には執行されません。
本人が知らされるのは、当日の朝
執行がいつ行われるかは、本人にも家族にも事前に知らされません。本人が告げられるのは、現在の運用では執行当日の朝とされています。告げられてから執行までは、1時間から2時間程度と報じられています。
この運用については、「不服を申し立てる時間が与えられず違憲だ」として、死刑確定者が国を相手取って訴訟を起こしており、裁判が続いています。かつては前日に告知されていた時期もありました。
立ち会う人が決まっている
刑事訴訟法477条1項は、死刑の執行に検察官、検察事務官、刑事施設の長またはその代理者が立ち会わなければならないと定めています。同条2項により、検察官または刑事施設の長の許可がなければ、他の者は刑場に入ることができません。
米国のように報道関係者が立ち会う制度はないため、日本では執行の時刻や様子が外部に伝わりません。このサイトの記録で、米国には時刻があり日本にはないのは、この違いによるものです。
執行に立ち会った検察事務官は執行報告書を作成し、検察官と刑事施設の長がこれに署名押印します(478条)。
執行が止められる場合
刑事訴訟法479条は、2つの場合に執行を停止すると定めています。
- 死刑を言い渡された者が心神喪失の状態にあるとき。回復するまで、法務大臣の命令で執行が停止されます。
- 死刑を言い渡された女性が妊娠しているとき。出産の後、法務大臣の命令によって執行されます。
執行後に公表されること
執行が行われた日、法務大臣は臨時の記者会見を開きます。ここで公表されるのは、執行された人の氏名、年齢、執行された施設です。
氏名が公表されるようになったのは2007年12月からです。それ以前は、執行の事実と人数だけが公表され、誰が執行されたのかは明かされていませんでした。日本の死刑執行記録が2017年12月以降を収めているのは、この公表制度によって氏名と執行場所が確認できるためです。
執行のない年がある
日本では、死刑の執行が1件もない年があります。近年では2011年、2020年、2023年、2024年がそうでした。これは制度が停止されたためではなく、その年に法務大臣が執行を命令しなかったためです。
執行は法務大臣ひとりの判断に委ねられているため、大臣が交代すると執行のペースが変わることがあります。記録を日付順に見ると、数年空いたあとにまとまって執行される、という動き方をしていることが分かります。
参照した法令
- 刑法 11条(死刑の執行方法)
- 刑事訴訟法 475条(執行の命令)、476条(命令後の期限)、477条(立会人)、478条(執行報告書)、479条(執行の停止)
- 刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律 178条(執行の方法と執行しない日)
条文は e-Gov 法令検索 で確認できます。死刑に関する法令をまとめたものとして CrimeInfo「死刑に関する法令」 があります。
関連
日本の死刑執行記録を見る / 「今日の記録なし」が意味しないこと / 記録に出てくる言葉