記録に出てくる言葉
このサイトの記録には、日本の報道では見慣れない言葉が出てきます。イランやサウジアラビアの罪状に使われる用語がその代表です。記録を読むために必要な範囲で説明します。宗教や法制度そのものの評価には立ち入りません。
罪状に出てくる言葉
キサース(同害報復)
殺人などに対して、被害者側が同じ害を加害者に返すことを認める考え方です。イランやサウジアラビアの記録で「殺人」とある事案の多くは、この枠組みで死刑が言い渡されています。
特徴的なのは、執行するかどうかを最終的に決めるのが国家ではなく被害者の遺族である点です。遺族が赦しを与えれば、執行は行われません。金銭による解決(後述のディーヤ)が成立した場合も同様です。刑場に運ばれた後で遺族が赦し、執行が中止された事例も報じられています。
ディーヤ(血の代償金)
キサースの代わりに、加害者側が被害者の遺族へ支払う賠償金のことです。遺族がこれを受け入れると、死刑は執行されません。支払えるかどうかで結果が変わるため、経済的な事情が生死を分けることになります。
タアズィール(裁量刑)
イスラーム法に刑罰の定めがない犯罪について、裁判官または国家の裁量で科される刑をいいます。サウジアラビアの記録で、麻薬の密輸に対する死刑はこの区分にあたります。「タアズィール刑として死刑を執行した」という形で内務省が発表します。
ハッド(固定刑)
イスラーム法に刑罰が明示されている犯罪と、その刑をいいます。裁量の余地がないとされる点でタアズィールと区別されます。ハラーバ(武装強盗、公道での襲撃)はここに含まれ、サウジアラビアの記録で「ハラーバの刑を科した」と発表されることがあります。
モハーレベ(神への敵対)
イランで用いられる罪名です。武器を取って社会の安全を脅かした、という趣旨の罪ですが、抗議行動の参加者や少数民族の活動家に適用されることがあり、人権団体が問題視しています。
エフサード・フェル・アルズ(地上における腐敗)
同じくイランの罪名で、社会秩序を大きく損なったとされる行為に適用されます。モハーレベと並んで、政治的な事案に使われることがあります。
執行方法
このサイトに現れる執行方法は、次のとおりです。事実の記載にとどめ、詳細な描写はしません。
絞首
世界でもっとも多く用いられている方法です。イラン、日本、シンガポール、イラク、エジプト、バングラデシュなどが採用しています。イランでは屋外や刑務所内で行われ、公開で行われることもあります。
斬首
サウジアラビアで用いられています。ただし同国は執行方法を公式に発表しないため、このサイトの記録では「非公表(サウジは通常、斬首)」と書いています。個別の事案でどの方法が用いられたかは、確認できません。
銃殺
ソマリア、イエメン、中国、ベラルーシ、北朝鮮などで用いられています。軍事法廷の判決による執行で使われることが多い方法です。
薬物注射
米国、中国、ベトナムなどで用いられています。米国の記録に「3剤」「エトミデート」といった記載があるのは、使用された薬剤の組み合わせが公表されているためです。州によって薬剤が異なり、同じ州でも時期によって変わります。
電気椅子・窒素ガス
米国の一部の州で、受刑者の選択または薬物が入手できない場合の代替として用いられることがあります。
手続きに関する言葉
拘置所
日本で、判決が確定した死刑確定者が収容され、執行が行われる施設です。刑務所とは異なり、刑が確定していない被告人や死刑確定者を収容します。日本で刑場が置かれているのは、東京・大阪・名古屋・広島・福岡・仙台・札幌の7か所です。
再審請求
確定した判決について、新たな証拠などを理由に裁判のやり直しを求める手続きです。日本では、再審請求中の期間は執行命令の6か月の期限に算入されません。ただし、再審請求中に執行された例もあります。
恩赦
行政の判断で刑を軽くしたり、消滅させたりする制度です。死刑が無期刑に減刑される場合を「減刑」といいます。
事実上の停止(モラトリアム)
制度としては死刑を残しているが、長年にわたり執行していない状態をいいます。国際的な統計では、10年以上執行していない国を「事実上廃止」として扱うことがあります。
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