無実のまま執行された
疑いが残る人
日本の4件は、執行される前に誤りが判明しました。では、判明する前に執行されてしまったら、どうなるのか。米国には、執行されたあとに有罪の根拠が崩れた事件がいくつもあります。ここでは、検証がとくに徹底された2件を取り上げます。
キャメロン・トッド・ウィリンガム — 火事は放火ではなかった
1991年、テキサス州で自宅が全焼し、3人の娘が亡くなりました。父親のキャメロン・トッド・ウィリンガムが放火殺人で有罪となり、2004年に処刑されました。
有罪の柱は、消防の火災調査官による「これは放火である」という鑑定でした。床の焼け方、ガラスのひび割れ方など、20を超える「放火の証拠」が挙げられました。
執行の2か月前に届いた報告書
執行の2か月足らず前、弁護人が火災科学の専門家ジェラルド・ハースト博士の報告書を提出しました。内容は、放火の証拠とされたものは、放火でなくても生じるというものでした。
報告書は間に合いませんでした。ウィリンガムは執行されます。
床の焼け方も、ガラスのひび割れも、フラッシュオーバーという現象——室内の可燃物が一気に燃え上がる状態——で自然に生じることが、その後の研究で分かっています。
つまり、この火事が放火だったという前提そのものが崩れました。放火でなければ、殺人事件は存在しなかったことになります。
カルロス・デルーナ — よく似た別の男
1983年、テキサス州コーパスクリスティのガソリンスタンドで、従業員のワンダ・ロペスさんが殺害されました。カルロス・デルーナが逮捕され、1989年12月7日に処刑されました。
有罪の決め手は目撃者による犯人識別でした。デルーナは一貫して無実を主張し、カルロス・エルナンデスという知人がやったと訴え続けました。
検察は法廷で、そんな人物は存在しない、デルーナの作り話だと主張しました。
カルロス・エルナンデスは実在しました。しかも、デルーナと顔がよく似ており、友人や家族でさえ2人の写真を取り違えるほどだったといいます。さらに、エルナンデスはデルーナが処刑された事件とよく似た犯罪を繰り返していた人物として、当時から警察と検察に知られていました。
デルーナが法廷で名指しした男は、実在し、警察が把握していた。それでも「架空の人物」として扱われました。
この2件が示していること
2件は原因がまったく違います。片方は科学の誤り、もう片方は目撃証言の誤りと、それを検証しなかった手続きです。共通しているのは結果だけです。
どちらも、いま訂正できません。米国では、執行された人について再審の手続きがありません。裁判所が「無実だった」と認定する道が制度上ないのです。だから何十年経っても、公式には「有罪のまま」です。
日本の免田・財田川・松山・島田の4人は、無罪を勝ち取って生きて出てきました。ウィリンガムとデルーナには、その時間がありませんでした。違いは、誤りの有無ではなく、判明が間に合ったかどうかです。
日本の飯塚事件
日本にも同じ構造の事件があります。飯塚事件です。
1992年に福岡県飯塚市で女児2人が殺害された事件で、久間三千年さんの死刑が2006年に確定し、2008年10月28日に執行されました。その後、有罪の柱だったDNA鑑定の手法に問題があったとして、遺族が再審を請求しています。争いはいまも続いています。
日本では、執行後でも遺族などが再審を請求できます。ただし、認められたとしても、本人はもういません。
なぜこのページを書いたか
このサイトは日々の執行を記録していますが、記録される1件ずつが正しい判決の結果だと保証することはできません。それを保証できる人は、どこにもいません。
ここに並ぶ名前のなかに、後年に有罪の根拠が崩れる人が含まれている可能性は、常にあります。この2件は、その可能性が現実になった例として記録されています。
出典
- Arson Experts Dismiss Evidence that Led to Texas Execution(Death Penalty Information Center)
- Texas Forensic Science Commission Closes Case of Possible Innocence(同)
- Cameron Todd Willingham: Wrongfully Convicted and Executed in Texas(Innocence Project)
- Columbia Law School Investigation Uncovers New Evidence Suggesting Texas Executed Innocent Man(コロンビア大学ロースクール)
- Study Shows Texas Executed Innocent Man(Equal Justice Initiative)
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