米国の死刑
州によってまったく違う
米国の死刑は、国として1つの制度があるわけではありません。州ごとに別々の制度があり、廃止した州と存置する州が同じ国のなかに混在しています。執行があるのは、そのうちさらに一部の州だけです。
執行しているのは、ごく一部の州
2026年に米国で執行が行われたのは、9月1日時点で6つの州、24人です。とくにフロリダ州に集中しており、同州だけで年内に十数件の執行が行われています。
執行数の年間規模は、イラン(2,000件超)の100分の1程度です。米国は「死刑大国」として語られることが多いのですが、世界全体の数字のなかでは小さな割合を占めるにすぎません。
時刻まで分かる唯一の国
このサイトの記録で、米国だけに「18:18 JST」のような時刻が入っているのに気づいた方がいるかもしれません。米国の執行は、死亡が宣告された時刻が分単位で公表されるためです。
理由は、報道関係者が立会人として執行に立ち会う制度があるからです。処刑室に入った時刻、薬物の投与が始まった時刻、死亡が宣告された時刻が、その場で記録され、地元紙が報じます。
日本には報道の立ち会い制度がないため、執行の時刻は分かりません。イランやサウジアラビアも同様です。米国が特別に情報公開に熱心というより、他の国が何も出さない、という関係です。
薬物が手に入らなくなった
米国の主な執行方法は薬物注射です。ところが2010年代以降、製薬会社が死刑用途への供給を拒否するようになりました。欧州の企業を中心に、死刑に使われることを理由に販売を止めたためです。
その結果、各州は薬剤の組み合わせを次々に変更してきました。このサイトの記録に「3剤・エトミデート」のような記載があるのは、州や時期によって使われる薬剤が違うためです。調達先を非公開にする州もあり、訴訟が起きています。
窒素ガスという新しい方法
薬物の入手難を背景に、一部の州が窒素ガスによる執行を導入しました。2024年にアラバマ州で初めて実施され、その後も用いられています。国連の人権専門家からは、拷問にあたる可能性があるとの懸念が示されています。
州によっては、受刑者が電気椅子や銃殺を選択できる制度が残っており、実際に選ばれた例もあります。
執行までの期間が長い
米国では、死刑判決から執行まで20年、30年かかることが普通です。このサイトの記録に「判決から35年」といった補足が付くことがあるのはそのためです。連邦裁判所への上訴を含む何段階もの手続きがあり、その間に判決が覆ることもあります。
冤罪の記録が残っている
米国は、死刑判決を受けた後に無罪となった人の記録を体系的に残している数少ない国です。Death Penalty Information Center が事例を集めたデータベースを公開しており、1970年代以降、多数の人が死刑囚房から釈放されています。詳しくは 冤罪と死刑 をご覧ください。
このサイトが参照している情報源
- Death Penalty Information Center — 2026年の執行一覧(毎日、東部時間の正午に更新)
- AP通信および各州の地元報道 — 死亡宣告の時刻はここから取得しています
DPICの一覧には時刻が載っていないため、時刻は必ず地元報道で確認しています。
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