イランの死刑
なぜ世界の8割が1国に集中するのか
このサイトの記録を開くと、イランの名前が並びます。編集の偏りではありません。2025年に世界で確認された死刑執行2,707件のうち、2,159件がイラン1国のものでした。人口8,000万人あまりの国で、世界の8割が行われています。
数の推移
イランの執行数は近年急増しています。2024年が少なくとも972件、2025年が2,159件。1年で倍以上になりました。イランにとっても、1981年以来の多さです。
この増加が何によるものかについて、人権団体は複数の要因を挙げています。麻薬犯罪への死刑適用の拡大、2022年以降の抗議行動に対する処罰、そして司法手続きの簡略化です。
もっとも多い罪状は、麻薬犯罪
イランの死刑で最も多いのは麻薬犯罪です。所持・運搬・密売の量に応じて死刑が科されます。イランはアフガニスタンと国境を接し、麻薬の主要な通過国となっているため、摘発の対象が膨大になります。
国際人権法では、死刑は「最も重大な犯罪」に限るべきとされ、国連は麻薬犯罪はこれに当たらないという立場を取っています。この点は、イランに対する国際的な批判の中心のひとつです。詳しくは 麻薬犯罪と死刑 をご覧ください。
次に多いのが、キサースによる殺人罪
殺人事件では、キサース(同害報復)の枠組みで死刑が言い渡されます。この場合、執行するかどうかを最終的に決めるのは国家ではなく被害者の遺族です。遺族が赦せば執行されず、賠償金(ディーヤ)による解決も認められています。
そのため、刑場に連れて行かれた後で遺族の赦しにより中止された、という事例も報じられます。逆に、支払う金がないために執行された事例もあります。
政治的な事案
モハーレベ(神への敵対)やエフサード・フェル・アルズ(地上における腐敗)という罪名は、抗議行動の参加者や少数民族の活動家に適用されることがあります。人権団体は、拷問による自白や弁護人へのアクセス制限を指摘しています。
このサイトの記録に、クルド系やバルーチ系の名前が目立つことがあります。人権団体は、少数民族が人口比に比して多く執行されていると報告しています。
アフガニスタン人が多い理由
記録に「アフガニスタン国籍」と書かれた人が頻繁に現れます。イランには数百万人のアフガニスタン移民・難民が暮らしており、弁護人を付けにくく、通訳もないまま裁判が進むことがあると指摘されています。
公表されるのは1割だけ
イランの執行のうち、当局が公式に発表するのは1割程度とされています。残りは公表されないまま行われます。
それを確認しているのが人権団体です。刑務所内の情報提供者や、遺体の引き取りを求められた家族からの連絡をもとに、氏名・年齢・刑務所名を裏付けて公表します。数日から数週間かかります。
このサイトが主に参照しているのは次の団体です。
- Hengaw Organization for Human Rights — 日次で個別事例を報告
- Iran Human Rights (IHRNGO) — 詳細な個別記事と年次報告
- HRANA — 人権活動家通信
公開処刑
イランでは、刑務所内だけでなく、屋外の公共の場で執行が行われることがあります。人権団体はこれを見せしめとして批判していますが、件数としては全体のごく一部です。このサイトでは、執行の様子を描写することも、画像を掲載することもしません。
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